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著作権裁判例4:放置系RPGの著作権侵害

Q.弊社はスマホのゲームアプリを配信している会社なのですが、最近、私たちのアプリだけにとどまらず、利用規約までも盗用していることが疑われるアプリが配信されていることを確認しました。当該会社に対して法的措置を執りたいのですが、どのような手段が可能なのでしょうか。

A.貴社開発のアプリケーションの著作権侵害を理由として、当該会社に対し、アプリの配信停止やアプリの削除請求をすることが考えられます。その際、アプリケーションを著作権が侵害されたかどうかは、様々な事情を考慮して慎重に検討する必要があります。利用規約については、著作物性が認められる場合もありますが、認められないことの方が多いと考えられます。

紹介裁判例・論文

 ・東京地判令和3・2・18裁判所ウェブサイト(原審)

 ・知財高判令和3・9・29裁判所ウェブサイト(控訴審

 ・東京地判平成26730日裁判所ウェブサイト

・東京地判平成13525日判タ1081267

 

 

 

第1 問題の所在

   プログラムは、著作権法のみではなく、特許法不正競争防止法・商標法・民法不法行為法)などによって多面的に保護されています。中でも、著作権法的な保護を検討する場合には、さらに、プログラムコードの著作物性を主張するのか、出力結果であるにおいては、その出力される画面表示の著作物性を主張するのかなど、問題は多面的です。

   以下では、近時問題となった裁判例をもとに、主にプログラムの著作権的保護について検討します。

   加えて、同裁判例において問題となった利用規約の著作物性、一般不法行為に基づく損害賠償責任の有無も検討します。

 

第2 知財高判令和3年9月29日裁判所ウェブサイト(及びその原審の東京地判令和3年2月18日裁判所ウェブサイト)の事案

 1 事案の概要

   本件は,原告が,関連会社2社と共に,放置系RPGスマホゲーム(以下「原告ゲーム」という。)に係る著作権(原告ゲームの⑴①基本的構成,②具体的構成(キャラクターの名称、公正、機能及び各画面の名称、構成、機能)③利用規約並びに⑵原告ゲームのプログラムに係る複製権・翻案権・公衆送信権。以下「本件著作権」という。)を共有しているところ,被告が作成したゲーム(以下「被告ゲーム」という。)につき、被告が制作・配信する行為は,本件著作権を侵害しており,被告に対し,本件著作権に基づき,被告ゲームの複製及び公衆送信の差止め並びにこれを記録したコンピューター及びサーバー内の記録媒体からの同記録の削除を求めるとともに,不法行為による損害賠償請求を求めた事案です。

 

放置系RPGとは,プレイヤーが,実際にプレイすることなくアプリを閉じていても,ゲームが自動的に進行し,経験値を獲得してキャラクターを育成することができる機能(フルオート機能)を有し,ゲームを再開した際に,プレイヤーが何らかの利得を得ることができ,あるいは放置することで楽しめるジャンルのロールプレイングゲーム

 

 2 裁判所の判断

⑴ ゲームの著作権侵害の判断基準について

 本件のような携帯電話機等を用いたゲームについては,通常の映画とは異なり,システムないしルールが決められ,プレイヤーはシステムないしルールに基づいてプレイするところ,このようなゲームのシステムないしルール自体はアイデアそのものであり,著作物ということはできず,システムないしルールに基づき具体的に表現されたものがある場合に,初めてその創作性の有無等が問題となるというべきである。

 また,このようなゲームは,プレイヤーが参加して楽しむというインタラクティブ性を有しているため,プレイヤーが必要とする情報を表示し,又はプレイヤーの選択肢を表示するための画面(ユーザーインターフェース)を表示する必要があり,また,ディスプレイ上に表示される画面は常に一定ではなく,プレイヤーが各画面に設置されたリンクを選択することによって異なる画面に遷移し,これを繰り返してゲームを進めるという仕組みになっているところ,一連のまとまった表現として把握される複数の画像が,プレイヤーの操作・選択により,又はあらかじめ設定されたプログラムに基づいて,連続的に展開することにより形成されている場合には,一連のまとまった表現を構成する各画像自体の創作性及び表現性のみならず,その組合せ・配列により表現される画像の変化も,著作権法による保護の対象となり得る。もっとも,このようなゲームにおける各画像及びその組合せ・配列については,プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性,操作等の利便性の観点から機能的な面に基づく制約を受けざるを得ないため,作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず,上記制約を考慮してもなおゲーム作成者の個性が表現されているものとして著作物性(創作性)を肯定し得るのは,他の同種ゲームとの比較の見地等からして,特に特徴的であり独自性があると認められるような限定的な場合とならざるを得ないものというべきである。

 

⑵ 原告ゲームの①基本的構成,②具体的構成(キャラクターの名称、公正、機能及び各画面の名称、構成、機能)、③利用規約著作権侵害の有無

ア 基本的構成

認定事実によれば,原告ゲーム及び被告ゲームは,①歴史をテーマにし,歴史上の武将を美少女化し,フルオート機能(プレイヤーが,実際にプレイすることなくアプリを閉じていても,ゲームが自動的に進行し,経験値を獲得してキャラクターを育成することができる機能)を備えた放置系RPGゲームである点,②サーバー内のプレイヤー同士でグループを作り,ボス等に挑戦することができる「同盟」機能,キャラクターのステータスや装備を好みに合わせて強化育成できる「強化育成」機能,サーバー内のプレイヤー間や同盟を結んだプレイヤー間で情報交換をすることができる「チャット」機能を備えている点において共通している。

しかし,上記及びの共通点は,いずれも両ゲームのシステムないしこれに対応する機能であって,アイデアにすぎないというほかなく,そのような点が共通するとしても,複製又は翻案に当たらない。

 

イ ②具体的構成(キャラクターの名称、構成、機能及び各画面の名称、構成、機能)の著作権侵害の有無

(ア)キャラクターの名称、構成、機能について

認定事実によれば,原告ゲームと被告ゲームは,キャラクターが「主将」と「副将」から構成される点,「主将」の職業は,初めてゲームを開始する際に,「筋力」をメインの能力とするもの,「知力」をメインの能力とするもの,「敏捷」をメインの能力とするものの3つの中から選択する点,「副将」は,歴史上の人物が女性化して登場し,一定の条件を満たすと,当該副将が使用できるようになり,レベルが上がるにつれて副将の数を増やすことができ,副将を「出陣」させたり,「応援」させたりすることができる点,各キャラクターは,画面上で華麗にゆらゆらと動いており,キャラクターをタッチすると,キャラクターのボイスを聴くことができる点において共通している。

しかし,上記ないしの共通点は,いずれも両ゲームのシステムないしこれに対応する機能であって,アイデアにすぎないものであり,また,上記の共通点も,各キャラクターの動きやボイスの機能をいうものであってアイデアにすぎないから,これらの点が共通するとしても,複製又は翻案には当たらない。

(イ)各画面の名称、構成、機能について

  (~裁判所による各表現の検討~)

被告ゲームの各画面は,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告ゲームの各画面と同一性を有するにすぎないものであり,また,具体的表現においても相違するものであって,これに接する者が原告ゲームの各画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,複製又は翻案に当たらない。

 

(ウ)③利用規約著作権侵害の有無

認定事実によれば,原告ゲーム及び被告ゲームの利用規約は,会社名を除き,同一の文言であることが認められる。

しかし,一般的に,ゲームの利用規約は,法令や慣行により,形式及び内容が定型的なものとなり,その創作性が認められるのは,それにもかかわらず作成者の個性が発揮されたといえるような極めて限定された場合に限られると考えられる。しかして,弁論の全趣旨によれば,原告ゲームの利用規約は,LINEゲームの利用規約と相当程度に類似しているものであることが認められる。そして,原告ゲームと被告ゲームの利用規約に係る上記共通部分をみても,いずれも定型的なものの範囲にとどまっており,上記の限定された場合に当たるものとみられるものは存しない。そうすると,上記共通部分については,いずれも創作性が認められないものというほかなく,そのような点が共通するとしても,複製又は翻案に当たらない。

 

(エ)ゲーム全体の著作権侵害の有無

 原告ゲーム及び被告ゲームは,いずれも,携帯電話機等を利用する歴史をテーマとする美少女育成型の放置系RPGであり,「ホーム」,「戦場」,「陣営」,「倉庫」,「チャット」,「同盟」の各画面を主要画面とし,ホーム画面上にボタンが表示される「競技」,「ショップ」ないし「商店」,「鋳造」,「任務」,「特典」,「チャージ」の各画面その他各種イベントに関する画面を中心とする構成であるところ,これらのゲーム内容及び各画面等については,基本的構成,具体的構成及び利用規約のいずれにおいても,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通しているにすぎず,また,具体的表現においては相違するものである。

そして,上記のような性質のゲームを採用した場合,プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性,操作等の利便性の観点から,各画面の機能ないし遷移方法については,ある程度似通ったものにならざるを得ないことをも踏まえると,原告ゲーム及び被告ゲームにおける各画面の機能ないし遷移方法を具体的にみても,特に特徴的であり独自性があるということはできない。

そうすると,被告ゲーム全体の構成・機能・画面配置等の組合せ(画面の変遷並びに素材の選択及び配列)についても,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告ゲームのそれと同一性を有するにすぎないものというほかなく,これに接する者が原告ゲームの画面の変遷並びに素材の選択及び配列の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとみるべきであるから,複製又は翻案に当たらないというべきである。

これに対し,原告は,原告ゲーム全体の構成・機能・画面配置等の組合せには選択の余地があり,創作性が認められるところ,被告ゲームは,原告ゲームと合計84画面の構成・機能・画面配置等が全て共通しており,原告ゲームをほぼデッドコピーして制作されたものであることは明らかであるから,両ゲームの個別の画面を逐一比較するまでもなく,ゲーム全体について複製又は翻案が成立することは明らかである旨を主張する。

しかし,著作物の創作的表現は,様々な創作的要素が集積して成り立っているものであるから,原告ゲームと被告ゲームの共通部分が表現といえるか否かを判断する際に,その構成要素を分析し,それぞれについて表現といえるか否か,また表現上の創作性を有するか否かを検討することは,有益かつ必要なことであって,その上で,ゲーム全体又は侵害が主張されている部分全体について表現といえるか否か,また表現上の創作性を有するか否かを判断することが,正当な判断手法ということができるところ,両ゲームの各画面等の共通部分は,アイデアや創作性のないものにとどまることは,前記説示のとおりである。そして,著作権法上,著作物として保護されるのは,画面の選択や配列に関するアイデア自体ではなく,具体的表現であるから,画面の選択や配列に選択の余地があったとしても,実際に作成された表現がありふれたものである限り,それが共通することを理由として,複製又は翻案が成立するということはできないし,具体的な表現が異なることにより,表現上の本質的な特徴が直接感得できなくなる場合があり得るところ,前記説示のとおり,本件において,被告ゲームの画面の選択や配列から,原告ゲームのそれの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないものである。

他方で,原告が主張するように,証拠(甲10~12,15,18,24,28)及び弁論の全趣旨によれば,被告ゲームのテスト版では,「サーバーデータ取得エラー26002」という原告ゲームと同じエラーメッセージが用いられ,被告ゲームの通貨は「判金」であるにもかかわらず,イベント画面において原告ゲームで用いている「元宝」(中国の貨幣)の名称が用いられていること,被告ゲームには,該当する名称の機能等が存在していないにもかかわらず,原告ゲーム内の機能等の名称である「同盟争覇戦」,「訓練所」,「遊歴」,「神将交換」,「高速戦闘」,「弓将」,「総力戦」,「神器」の用語がそのまま用いられており,チャット機能において,原告ゲームと同じバグが存在していること,さらに,被告ソースコードには,原告ゲームの開発担当者の名前が残されたままとなっていることが認められる。

しかし,上記の事実から,被告ゲームが原告ゲームを参考にして制作されたことが認められるとしても,その共通点はアイデアや創作性のないものにとどまり,また,具体的表現において相違し,デッドコピーであるとは評価できないのであるから,被告ゲーム全体が,原告ゲーム全体の複製又は翻案に当たるということはできない。

 

⑶ ゲームのプログラムの著作権侵害の有無

原告は,被告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムは,原告ゲームの「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラムを複製又は翻案して作成されたものであり,原告ソースコードに係るプログラム著作権をも侵害している旨を主張し,これに沿う証拠を提出する。

そこで検討するに,原告ゲーム及び被告ゲームは,携帯電話機等を用いて配布・実行されるゲームアプリ(Androidの場合にはGoogle Play,iOSの場合にはApp Storeを介して配布)であり,サーバー側のプログラムとネットワークを介して通信しながら実行が進められるものであることが認められる。また,認定事実によれば,原告ゲーム及び被告ゲームには,任務(ミッション)画面(メインミッション画面,デイリーミッション画面,功績画面)が存在し,これらは,主に「メインミッション」ボタン,「デイリーミッション」ボタン,「功績」ボタン,「ヘルプ」ボタン,「戻る」ボタンという5つのボタンと,上記ないしのボタンにそれぞれ対応した表示項目で構成されていることが認められる。

この点,被告は,そもそも,原告ゲームに原告ソースコードが存在すること,被告ゲームに被告ソースコードが存在することを争っているが,仮に原告の主張を前提とした場合,原告ゲームのゲームアプリ(sanguo_Google_34_1.200.34.apk)及び被告ゲームのゲームアプリ(戦姫コレクション_v1.0.68.apk)は,主として,オープンソースのゲームフレークワーク(ゲームの基本的な処理を行うプログラムであって,これに含まれる各種「処理」を呼び出すゲームのソースコードを記述することで,グラフィック描画,キャラクターの動作,ネット通信等のゲームプログラムにおいてよく使用される機能を簡単に実現することができる。)であるCOCOS2D-X,原告ゲームにつき473個,被告ゲームにつき555個のLuaファイル(Lua言語で記述されたソースコード)等から構成されていると考えられる。そして,原告ゲームの上記473個のLuaファイルのうちの「MissionMainPage.lua」(「任務(ミッション)」に係る画面の切り替え等の機能に関するプログラム)のソースコード(原告ソースコード)とこれに対応する被告ゲームのプログラムのソースコード(被告ソースコード)は,その大部分(「AUTHOR」欄の開発担当者の氏名や作成日付を含む。)が一致していることが認められる(原告ソースコードの行数が182行,被告ソースコードの行数が190行であり,これらのうち165行が共通しており,類似度は90.66%である。)。

しかし,原告ソースコードは,全体として,ゲーム画面内の上記5つのボタンが押された際の画面の切り替えに関する処理や表示内容の更新処理を行うものにすぎず,「メインミッション」,「デイリーミッション」,「功績」の内容とは直接関係しない,上記のような定型的な処理を機械的に実行するプログラムであるにすぎない。そして,個々のソースコードをみても,いずれも単純な作業を行うfunction(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等)が複数記述されたものにすぎないから,このように定型的なありふれたものについて作成者の個性が表れており創作性があるとは認められないし,そのような創作性の認められない個々のソースコードの記載の順序や組合せについても,あくまでゲームの機能に対応した表現にすぎないから,やはり創作性があるとは認め難いというべきである。これに反する原告の主張は,採用することができない。

したがって,原告ソースコードと被告ソースコードの存在を前提としたとしても,被告ソースコードは,表現上の創作性がない部分において原告ソースコードと同一性を有するにすぎないから,原告ソースコードの複製又は翻案には当たらないというべきである。

 

⑷ 一般不法行為の成否(控訴審のみ)

控訴人(原告)は,多大な費用,時間と労力をかけて原告ゲームを制作し,これを配信して営業活動を行っていたところ,被控訴人は,原告ゲームの各種データをほぼ全面的にデッドコピーした上で,各画面のキャラクター,アイコン等や用語を一部改変して被告ゲームを制作し,控訴人の販売地域と競合する日本国内において配信し,これによって本来必要となる多大な費用,時間と労力を免れたものであり,このような被控訴人の行為は,自由競争の範囲を逸脱した不公正な行為に当たり,著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的保護に値する控訴人の営業上の利益を違法に侵害したものというべきであるから,控訴人に対する一般不法行為を構成する旨主張する。

しかしながら,控訴人の主張する法的保護に値する控訴人の営業上の利益とは,原告ゲームの各種データを独占的に利用して,営業を行う利益をいうものと解され,当該利益は,著作権法が規律の対象とする著作物の独占的な利用の利益にほかならず,これと異なる法的保護に値する利益であるものと認めることはできない。 

また,本件においては,被控訴人による被告ゲームの制作及び配信行為が,自由競争の範囲を逸脱し,又は控訴人の営業を妨害し,控訴人に損害を加えることを目的とするなどの特段の事情は認められない。

したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。

 

第3 検討

 1 ゲームに関する著作物の表現の類比判断

   利用規約を含め、本件においては、原告が主張したものは、すべて著作物性が否定されています。利用規約は別途検討するとして、その他の対象物に関する判断は、以下のとおりです。個人的に気になったのは、プログラムの著作物性において、全体に占める、問題となったプログラムの重要性が、著作物性を検討する上で指摘されている点です。この点については、著作物性の判断対象を、あくまでゲームプログラム全体とみるのか、当該モジュール単体で見るのかという点の相違によるものと思われますが、原告ゲームの開発担当者の名前が被告ゲームのソースコードにそのまま記載されており、●パクリされた疑惑が強い本件においては、著作権侵害を否定することにやや引っ掛かりを覚えます。

対象

著作物性を否定する理由

基本構成(放置系RPGゲームである点、チャット機能を有する点)

イデアにすぎない

キャラクターの名称、構成、機能

キャラクターが「主将」と「副将」から構成される点

「主将」の職業を、初めてゲームを開始する際に,「筋力」,「知力」,「敏捷」の3つの中から選択する点

「副将」は,歴史上の人物が女性化して登場し,一定の条件を満たすと,当該副将が使用できるようになり,レベルが上がるにつれて副将の数を増やすことができ,副将を「出陣」させたり,「応援」させたりすることができる点

↑いずれも両ゲームのシステムないしこれに対応する機能であって,アイデアにすぎない

各キャラクターは,画面上で華麗にゆらゆらと動いており,キャラクターをタッチすると,キャラクターのボイスを聴くことができる点

↑各キャラクターの動きやボイスの機能をいうものであってアイデアにすぎない

各画面の名称、構成、機能

被告ゲームの各画面は,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告ゲームの各画面と同一性を有するにすぎないものであり,また,具体的表現においても相違するものであって,これに接する者が原告ゲームの各画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできない

ゲーム全体(デザイン等の組み合わせ)

被告ゲーム全体の構成・機能・画面配置等の組合せ(画面の変遷並びに素材の選択及び配列)についても,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告ゲームのそれと同一性を有するにすぎないものというほかなく,これに接する者が原告ゲームの画面の変遷並びに素材の選択及び配列の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとみるべき

ゲームのプログラム

原告ソースコードは,全体として,ゲーム画面内の上記5つのボタンが押された際の画面の切り替えに関する処理や表示内容の更新処理を行うものにすぎず,「メインミッション」,「デイリーミッション」,「功績」の内容とは直接関係しない,上記のような定型的な処理を機械的に実行するプログラムであるにすぎない。そして,個々のソースコードをみても,いずれも単純な作業を行うfunction(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等)が複数記述されたものにすぎないから,このように定型的なありふれたものについて作成者の個性が表れており創作性があるとは認められないし,そのような創作性の認められない個々のソースコードの記載の順序や組合せについても,あくまでゲームの機能に対応した表現にすぎないから,やはり創作性があるとは認め難い

 

 2 利用規約の著作物性

   本判決においては、利用規約の著作物性は原則的に認められないかのような判旨になっていますが、過去には、利用規約の著作物性を認めた裁判例もあります(東京地判平成26730日裁判所ウェブサイト)。個人的には、利用規約の著作物性を認めた裁判例の、以下のような判旨のスタンスが妥当ではないかと思われます。

  「…規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。

   この点、本件においては、会社名以外全く同一というほぼデッドコピーに近いものだったことがうかがわれますが、利用規約著作権法上の保護を著しく引き下げるものとなるため、やはり利用規約の内容など、より詳細に事実認定をしてもよかったのではないかと個人的には思います。

  (著作物性が認められるほどの独創的な利用規約というのが、読む側にとってユーザーフレンドリーかという点は、ビジネス上問題になるとは思いますが…)。

 

 3 一般不法行為の成否

   原告は、原審において敗訴したことを踏まえ、控訴審において、著作物性が否定された場合であっても、原告の営業上の利益を侵害するものであるとして、一般不法行為に基づく請求を追加しています。このような主張は、翼システム事件(東京地判平成13525日判タ1081267頁)を想起させますが、控訴審は、2つの理由を以って、原告の請求を棄却しています。このような主張は、知的財産法で保護しないという制度設計をしたものについて、別の観点からどこまで保護すべきかという問題も関わるため、慎重に検討した結果なのだろうと思われます。